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Kelly基準
— 「いくら賭けるか」を数学で決める方法
読み終わるまで: だいたい8分
この記事のまとめ
- Kelly基準 = 全財産の何%を賭けるべきかを数学で計算する公式
- 公式: 賭け金率 = (オッズ × 的中確率 − 1) ÷ (オッズ − 1)
- 例: 確率40%、オッズ3倍 → 10% 賭けるのが理論的最適
- ただし 「Full Kelly」は危険 。半分の 「Half Kelly」 が実用的
- 当サイトはKelly に基づく賭け金推奨を提供しているが、 守るかは殿の判断 で御座る
1. 「いくら賭けるべきか」問題
AIが「このレースは期待値プラス」と教えてくれたとして、 殿はいくら賭けますか?
- 500円? → 安全だが、的中しても利益が小さい
- 5,000円? → 利益は大きいが、外れたら痛い
- 50,000円? → 連敗したら破産
この 「賭け金の最適解」 を、数学で求めるのが Kelly基準(ケリー基準、Kelly Criterion) で御座る。 1956年に統計学者 J.L. Kelly Jr. が考案した、ギャンブラーや投資家がよく使う公式。
2. Kelly基準の公式
公式はシンプル:
Kelly基準(基本形)
賭け金率(f) = (オッズ × 的中確率 − 1) ÷ (オッズ − 1)
※ オッズは「賭け金1に対して何倍戻るか」(=払戻倍率)。 的中確率は0〜1の小数(30%なら0.3)。
実例で計算してみる:
例1: 的中確率40%, オッズ3倍
f = (3 × 0.4 − 1) ÷ (3 − 1)
f = (1.2 − 1) ÷ 2
f = 0.2 ÷ 2
f = 0.10 → 全財産の10%を賭ける
つまり、 10万円持っていたら、このレースに1万円賭けるのが最適 と Kelly が言うておる。
3. 期待値プラスでも「賭けない」が正解の場面
Kelly公式の重要な性質: 期待値プラスでないと、 f がマイナスになる 。 これは 「賭けない方がよい」 という数学的なシグナル。
例2: 的中確率30%, オッズ3倍 → 期待値0.9
f = (3 × 0.3 − 1) ÷ (3 − 1)
f = (0.9 − 1) ÷ 2
f = -0.1 ÷ 2
f = -0.05 → マイナス。賭けるべきではない
つまり、 期待値プラスのレースだけ Kelly が「賭けろ」と言う 。 詳しくは 期待値の話 を読んでくだされ。
4. Full Kelly と Half Kelly
Kelly公式が出す数字(例: 10%)を 「Full Kelly」 と呼ぶ。 これは 理論上、長期で最大の資金成長 を生む賭け金。
しかし、 Full Kelly は実務では危険 でもある。理由は2つ:
- 確率推定の誤差に脆弱 — 確率を5%多めに見積もっただけで、賭け金率が大きく変わる
- 短期のドローダウンが激しい — 連敗で資金が半分になる場面が普通にある
そのため、プロのギャンブラーは 「Half Kelly(Kelly公式の半分)」 を採用するのが定石で御座る。 上の例なら、Full Kelly 10% → Half Kelly 5% で賭ける。
Full vs Half Kelly
- Full Kelly — 理論最適だが、ドローダウン大(半減リスク)
- Half Kelly — 利益は3/4、リスクは半分。 多くのプロが採用
- Quarter Kelly — さらに保守的。資金を温存したい時に
5. Kelly公式の前提条件
Kelly公式は美しいが、 使う前に確認すべき前提 がある。
- 確率推定が正しい — 校正ズレがあると意味がない(確率校正と選択バイアス)
- 独立試行 — 各レースの結果が独立している(ボートレースはおおむねこれを満たす)
- 資金が分割可能 — 100円単位の賭けなら、ほぼ満たす
- 長期運用 — 短期では理論通りに動かない
特に 確率推定の正しさ が最重要。 適当なAIが出した「30%」を信じて Full Kelly で賭けるのは、 ほぼ確実に破産コース で御座る。
6. 当サイトのKelly運用
当サイトでは、各推奨レースに対して Kelly基準に基づく賭け金推奨 を表示しておる。
当サイトのKelly運用
- Half Kelly を基本 — Full Kelly の半分
- 1レースあたり上限 5% — Kelly が大きすぎる時のセーフガード
- 1日あたり上限 20% — 連敗ガード
- 確率校正済みのモデルのみ採用 — 校正ズレモデルでKellyを使わない
ただし、 表示する金額は「数学的推奨」 。 殿(あなた)が同じ金額を賭ける必要はない。もっと少なく賭けるのも、賭けないのも自由 で御座る。
7. 「Kelly基準を信じない方がよい」場面
以下のような場面では、 Kelly基準を真に受けない方がよい:
- サンプル数が少ない時 — n=10でROI 1.5は偶然の可能性
- Bootstrap CI が広すぎる時 — 「真のROIは0.5〜2.5」なら Kelly は使えない
- 新エンジン期や悪天候時 — モデル精度が普段と違う
- あなた自身が熱くなっている時 — Kelly は「冷静な数学」。熱くなったら全部無効
特に 「あなたの判断より Kelly公式を優先する」 のが基本。 「もっと賭けたい」と思っても、Half Kelly までで止めるのが長期戦略で御座る。
8. 「実例」 — 1万円から始めて、Half Kellyで運用
仮に1万円から始めて、毎日3レース、Half Kelly で運用するとどうなるか?
< 仮定 >
- 各レース、的中確率35%、オッズ3.0倍(期待値1.05)
- Half Kelly = (3 × 0.35 − 1) ÷ (3 − 1) ÷ 2 = 0.0125 = 1.25%
- 初期資金1万円なら、1レース125円程度
1ヶ月(90レース)後の理論期待: +5%程度の資金増(+500円)
地味ですよね。これが Glass Box戦略 + Half Kelly の 「正直な現実」 で御座る。 1万円が3ヶ月で10万円になるような派手な数字は出ない。 詳しくは 回収率200%の罠 を読んでくだされ。
9. 「賭け金を増やす」よりも「機会を選ぶ」
Kelly基準を学んだ初心者がよく失敗するのは、 「Kelly公式に従えば必ず増える」と勘違いすること 。
実際は、 「期待値プラスのレースを選ぶ」 部分の方が、Kelly公式を計算する部分よりはるかに難しい。 AIモデルが期待値を正しく推定できないなら、 Kelly公式は ただの計算機 でしかない。
当サイトでは、機会選択(どのレースを買うか)と Kelly計算(いくら賭けるか)を 両方やっている 。 ただし、 機会選択の精度こそが本質 、というのは正直に書いておく。
10. ギャンブル依存症窓口
Kelly基準は 「冷静な賭け金管理の数学」 。 熱くなって Kelly を超える賭けをするくらいなら、 そもそも賭けない方がよい。
ギャンブル依存症 専門相談窓口
電話: 0570-783-849
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